実務で役に立つ人事労務の話

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#01 コロナ禍での年次年次有給休暇の取得、どうしてる?

こちらは2020年12月に弊社メールマガジンに掲載された記事の再掲です。

2019年4月より、全ての企業において、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、年5日の年次有給休暇を取得させることが義務になりました。
2020年度も残すところあと3か月と少し、御社の労働者の皆さんの取得状況はいかがでしょうか。

「新型コロナの影響で休業させていたから年次有給休暇どころじゃない」
「在宅勤務が増えて自宅にいることが増えたせいか、労働者が年次有給休暇を取得しなくなった」
「事業を継続させることに精一杯で、労働者の年次有給休暇のことなどすっかり忘れていた」

企業を支援していて、これらの声を度々聞きます。
確かに、今年についてはそれどころじゃない、という企業はたくさんあるはずです。

しかし…じゃあ今年度は特別にこの義務が免除されるのかというと、2020年12月時点では残念ながらそのような情報は出てきていません。

所得促進のための施策を検討しましょう

労働者が進んで年次有給休暇の取得をしないのであれば、会社から働きかけを行うことが必要になります。その方法はいくつかあります。

①年次有給休暇取得計画表(カレンダー)を作成する。Excelなどのツールを使って年度別や四半期別、月別などの期間で計画表を作成し、休暇取得の予定を“見える化”します。
これにより休暇や仕事の予定を調整でき、業務の都合による取得しづらさを解消できます。

②会社からの時季指定を行う。年次有給休暇を付与した日から一定期間が経過したタイミング(例えば半年後など)で取得が5日未満となっている労働者に対して、会社から時季指定を行います。
これにより年次有給休暇の取得日数を効率的に管理することができます。

③計画年休制度を導入する。例えば夏季に年次有給休暇を計画的に付与して連続休暇としたり、ゴールデンウイークの休日が飛び石になっている場合、平日に計画年休をあてて連続休暇としたり、閑散期に計画年休を設けるなど、業種や職種の特性に応じて、いろいろな付与の方式があります。
これにより労働者がためらいを感じずに年次有給休暇を取得することができます。

なお、②・③については就業規則への記載、③については労使協定の締結も必要です。

気持ち良く年次有給休暇を所得してもらうために

心身の休息やリフレッシュのための年次有給休暇。
その取得についてあまり“義務”という言葉は使いたくないですよね。

年次有給休暇の取得が進んでいるある企業では、経営者が「休息こそが仕事のパフォーマンス向上の原動力だ!」という強いメッセージを継続的に発信しています。
経営者自らが後押しすることで管理職が積極的に休暇を取得し、一般社員も取得しやすくなり、“義務”を意識せずにも自然に休暇を取得する風土が定着していきます。
この企業では年次有給休暇取得率100%を達成し、離職率が高い業界ながら、ほぼ離職者も発生していません。

在宅勤務が増えると、仕事とプライベートの境界があいまいになりがちです。
コロナ禍で気持ちがぎすぎすしがちな今だからこそ、仕事をするときは集中して取組み、しっかり休暇も取って思い切りリフレッシュする。それが心身の健康を保ち、仕事の生産性を上げるカギになります。
新しい発想は、リフレッシュがあるからこそ生まれてきます。
旅行や遠出ができなくても、青空のもとで近所をお散歩するだけでもリフレッシュになりますので散歩はおススメです。

ぜひ、「それどころじゃない」という思いを封印し、長い目で見た生産性向上や企業の成長のために、休暇の取得しやすい環境の整備や風土醸成にも目を向けてください!

あすそら社会保険労務士事務所 代表 大野知美

あすそら社会保険労務士事務所 代表
特定社会保険労務士・キャリアコンサルタント

大野 知美

IT企業人事部勤務を経て独立。企業人事出身であることから『当事者目線に立った支援』が強み。主に顧問先企業の人事労務相談や就業規則の作成、各所での講演活動等を行っている。
その他、中堅・中小企業の働き方改革や健康経営の推進、女性活躍の推進にも注力している。

あすそら社会保険労務士事務所webサイト

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#02 継続的なテレワークのために確認しておきたいポイント
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