デザインの風

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#01 デザインの風

こちらは2022年2月に弊社メールマガジンに掲載された記事の再掲です。

今月から新規コラムの連載を担当することになった西山耕一と申します。デザインをベースとしたプランニングパートナー・ユメックス株式会社の代表を務めています。本メルマガのタイトルは「風の便り」。その時々の風に乗って、フワフワと、時にはビュービューと、「デザイン」にまつわる話題を提供させていただきます。

・ 私たちの仕事はラブレターの代筆 ・
・ もうデザイナーに頼まなくてもいいんじゃね? ・
・ 自分が書いたラブレターほど恥ずかしいものはない? ・

私たちの仕事はラブレターの代筆

仕事として40数年、修行を含めるとほぼ半世紀もデザインに関わってきてた身ではあるが、デザイナーの後進の指導ならいざしらず、本メルマガをご覧の多士済々の方々に響く話や役立つ情報などあるのだろうか? 結論から言えば、ないのである。
いやいや、それでは元も子もない。正確にいうと、多方面の老若男女さまざまな方に同時に響く話はないということ。商品の広告などはその典型だ。誰もが必要とする情報なんてあるだろうか。家や車は欲しくても先立つものがなければ買えないし、キングオブフルーツと呼ぶ人もいるドリアンを、あんな〇〇みたいなものが食えるかという人もいる。スマホどころかガラケーさえ持たない人、パンツをはかない人、ここ30年歯磨きなんてしたことないという人さえ、私は知っている。
広告は広いという字はついているものの、たとえば40歳、機器メーカーの研究開発職で部門リーダーなどと相手を想定した、特定の方に送るラブレターなのだ。
そして私たちデザイナーは、クライアントに代わってラブレターの代筆をするのが仕事ということになる。

もうデザイナーに頼まなくてもいいんじゃね?

DTP(デスクトップパブリッシング)という言葉が日本に上陸したのは1989年〜90年と記憶している。AppleのMacintoshが日本語に対応した時だ。WYSIWYG(What You See Is What You Get)という概念も初めて目にした。それまではデザイナーは、白い紙の上に定規と鉛筆で文字や写真のレイアウトをし、赤ペンや緑ペンで書体の級数・行間の指定、CMYKのパーセントの掛け合わせで色を指定し、写植屋さん、版下屋さん、製版屋さん、校正刷屋さんの手を経てようやく意図したものを目にすることができたのだ。それがディスプレイ上で文字や写真のレイアウトが完結し、色も経験値による目の補正をいくぶんかければ確認できるようになったのだ。そうは言っても当初は数百万円の初期投資が必要なうえに、上がりは満足とは言い難かったWYSIWYG。それがCPUやディスプレイの性能アップ、フォントやアプリケーションの進化に加え、当時は実験段階でしかなかった通信ネットワークの登場もあり、今や数万円のパソコンと月数千円のサブスクで、プロのグラフィックデザイナーと遜色ない環境が手に入る。まして印刷を前提としないWEBデザインにおいては即日開業可能だ。そんな状況下では、もうデザイナーに頼まなくてもいいんじゃね? ということになるが、そうでもない。

自分が書いたラブレターほど恥ずかしいものはない?

ラブレターを自分で書くのは難しい。自分は自分のことを知りすぎるため、これも良いところ、あれも良いところと伝えたいことがいっぱいになる。逆に好きだ好きだというだけで自分のことを端折ってしまい、結果何も伝わらない手紙になる。自分を客観視できない自己中心的な手紙を書いて、後世に恥をさらすことさえある。ラブレターなら笑われて済ませれば良いが、広告はそうはいかない。自分(製品やサービス)の良さを想定した相手(潜在顧客)に的確に届けなくてはならない。そのためには自分も相手も客観的に見ることができ、かつ上手な手紙を書ける第三者、つまりデザイナーが適しているのである。(ざっくりデザイナーと書いたが、広告制作にはアートディレクター、コピーライター、クリエイティブディレクター、フォトグラファー、スタイリスト、イラストレーター、DTPオペレーターなどが関わっていることが多い)

というわけで、最後はデザイナーによるデザイナーのための営業的というか保身的な結論に至ってしまったが、言ってることは本当である。

ユメックス株式会社 西山耕一

ユメックス株式会社
代表取締役 プランニングディレクター/デザイナー

西山耕一

愛媛県久万高原町生まれ。血液型:O。山羊座。動物占い:ペガサス。14歳でグラフィックデザイナーを志し、21歳でデザイナーとしてプロダクションに入社。23歳で独立、30歳でユメックスを設立し現在に至る。元スタッフ10人以上がフリーランスまたは会社を設立し、心強いパーティを形成。お気に入りの言葉は「デザイナーの仕事はラブレターの代筆」。

ユメックス株式会社webサイト

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#02 広告=ラブレターがめでたく読まれれるために
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