実務で役に立つ人事労務の話

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#08 育児休業制度の柔軟化により男性の育休取得率アップに期待!

こちらは2021年8月に弊社メールマガジンに掲載された記事の再掲です。


男性の育児休業取得率の実態

政府は男性の育児休業取得率について、以下の目標を掲げています。

令和2(2020)年:13%
令和7(2025)年:30%

さて、これに対して直近の実績はどうであったかといいますと、令和2年度の実績は、男性の取得率12.65%という結果でした。残念ながら目標には到達できませんでしたが、令和元年度が7.48%だったことから考えると、着実に伸びてきていることが分かります。

果たしてあと4年で30%をクリアできるのか? 今回は、そのカギのひとつを握っているともいえる、令和3年6月9日に公布された改正育児・介護休業法について、ポイントをお伝えします。

子の出生直後に取得できる新たな育児休業制度が創設

これは、今回新たに創設された制度ですが、子の出生後8週間以内に4週間まで取得が可能な育児休業で、「男性版産休」などと呼ばれている制度です。 分割して2回取得可能となっていますので、例えば、子の出生直後に1回取得して、その後妻が里帰りから戻るタイミングで2回目を取得する、といった利用の仕方などが考えられます。

また、これまでの育児休業制度では、休業中の予定した就労は認められていませんでしたが、今回の法改正により、労働者の意に反したものとならないよう、労使協定を締結している場合に限り、労働者と事業主の合意した範囲内で、事前に調整した上で休業中に就業することが可能になります。

尚、休業の申出期限も原則1か月前から、2週間前までに短縮されます。

このように、これまでの育児休業制度と比較して、男性従業員の家庭や仕事の事情を勘案した柔軟な制度となっています。
この制度についての施行日は、「公布日から1年6か月を超えない範囲内で政令で定める日」とされていますので、令和4年中には施行される予定です。

育児休業を取得しやすい雇用環境づくり

企業に対して、育児休業を取得しやすい雇用環境の整備が義務付けられます。 具体的には、育児休業の制度やその利用、周りのフォローアップ等に関する研修を実施したり、育児休業に関する相談窓口を設置するといった内容になります。

また、従業員または配偶者が妊娠または出産した旨等の申出をしたときに、当該従業員に対し新制度及び現行の育児休業制度等を周知するとともに、これらの制度の取得意向を確認するための措置についても義務付けられます。 これまでも女性従業員については、産前産後休業や育児休業取得の必要から申出がなされてきた一方で、男性従業員から配偶者の妊娠・出産について申出がなされるというのはそれほど多くなかったのではないでしょうか。 今後は、男性従業員から申出があった場合に育児休業の制度について周知を行うこと、そして制度を利用するかの確認が必要となりますが、その前提として、男性従業員から配偶者の妊娠・出産について申出をしてもらいやすいような風土作りや、管理職への当該制度の理解促進が必要になってくると思います。

尚、周知の方法としては、面談での制度の説明や書面等による制度の情報提供等が挙げられます。

この制度についての施行日は、令和4年4月1日です。 施行まで1年を切っておりますので、早めに対応を検討しましょう。

現行の育児休業の分割取得が可能に

前述の新たに創設された育児休業とは別に、育児休業が分割して2回まで取得可能となります。

また、保育所に入所できない等の理由により1歳以降に育児休業を延長する場合について、開始日を柔軟化することで、各期間途中でも夫婦交代が可能(途中から取得可能)となります。 これまでは、1歳以降に延長した場合の育児休業の開始日が各期間(1歳~1歳半、1歳半~2歳)の初日に限定されていたため、各期間開始時点でしか夫婦交代ができない制度となっていました。

この制度改正により、女性に偏りがちだった育児の負担を夫婦で分担して行うことができるようになるとともに、女性のキャリアの長期間にわたる分断を防ぐことも期待できます。

この制度についての施行日は、「公布日から1年6か月を超えない範囲内で政令で定める日」とされていますので、令和4年中には施行される予定です。


<育児休業の分割取得のイメージ>

有期雇用労働者も育児休業が取得しやすくなる

これまで、有期雇用労働者の育児休業取得については「引き続き雇用された期間が1年以上」という要件がありましたが、今後はこの要件も緩和され、無期雇用労働者と同様の取扱いとなります。
つまり、労使協定の締結により1年未満の有期雇用労働者を除外することは可能ですが、例外なく1年以上必要、という要件はなくなります。ただし「1歳6か月までの間に契約期間が満了することが明らかでない」という要件は現在のまま残ります。

この制度についての施行日は、令和4年4月1日です。

また、この他、令和5年4月1日から、従業員1,000人超の企業を対象に、育児休業の取得の状況について公表が義務付けられます。

企業が対応するべきこと

今回の法改正を踏まえて、企業としては以下のような取組みが必要となります。

・就業規則(育児・介護休業規程)の改定、制度の周知
・研修や相談窓口の設置の検討
・業務の俗人化の排除

いくら制度を整えて研修や相談窓口を設置しても、業務が人に付いている状況では休業の取得は進みません。
マニュアルや業務フローを整備することで業務を見える化したり、チーム制を導入する等の取組みを行うことにより、育児休業を取得する人が出ても支障が出ないような体制づくりについてもぜひご検討ください。

あすそら社会保険労務士事務所 代表 大野知美

あすそら社会保険労務士事務所 代表
特定社会保険労務士・キャリアコンサルタント

大野 知美

IT企業人事部勤務を経て独立。企業人事出身であることから『当事者目線に立った支援』が強み。主に顧問先企業の人事労務相談や就業規則の作成、各所での講演活動等を行っている。
その他、中堅・中小企業の働き方改革や健康経営の推進、女性活躍の推進にも注力している。

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