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#02 どうしたら若手社員の離職を防げるか…
こちらは2023年6月に弊社メールマガジンに掲載された記事の再掲です。
先月第1回の内容はいかがでしたでしょうか?日本ブロアー様のメルマガへの初寄稿でした。皆さんにどのように受け取っていただけたのか、気になるところです。
前回1回目は、「社員に『この会社で働けて幸せ』と思ってもらうために…」というタイトルでお話をさせていただきました。
社員にこの会社で働けて幸せと思ってもらうためには、「自由に発想でき、安心して自分の考えたことを発信できて、その自分の考えたことを仲間と具現化でき、お客様など他者に喜んでもらえていることを実感でき、成果に繋げられる」ようにする仕組みが必要、そんな内容でした。
何か御社のヒントになることがあったのであれば嬉しいです。
さて、4月には新入社員が入ってきた会社さんも多いと思います。今回第2回目は、「どうしたら若手社員の離職を防げるか…」というテーマでお話します。
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論理的思考の話し
弊社のクライアント企業さんで、入社して3年目までの離職率が28%だったのを、とある取り組みにより5.4%へ低減させた事例をご紹介したいと思います。
せっかく採用した新入社員が、十分に活躍する前に「こんな会社とは思わなかった」「こんな会社では働けない」等の理由で会社を去ってしまうとしたら、それは、なんとも寂しいですよね(と、言いつつ、中小企業の社長さんで、それをあまり寂しいことだと捉えていない方もそこそこいたりしますが…)。
現実的な話をすれば、採用に掛けた費用も無駄になってしまいます。業績にも悪影響です。
転職が当たり前になっている時代ではあります。社員の離職を前提に経営をしなければいけない、という考えもあるでしょう。しかし、従業員満足度を高め、魅力ある職場づくりに取り組み、「こんな会社では働けない」という理由で辞める人を少しでも減らす努力は企業にとって必要ではないかと思うのです。
事実、離職率と業績との直接的な相関関係を示すデータではありませんが、「従業員満足度と顧客満足度の両方を重視する企業」は、「顧客満足度のみを重視する企業」と比べ、業績が向上する、という結果が出ています。
厚生労働省の平成27年(ちょっと古いデータで申し訳ありません)「今後の雇用政策の実施に向けた現状分析に関する調査研究事業」によれば…
5年間で売上高営業利益率が増加傾向のある企業は、顧客満足度のみ重視の企業では25.0%であるのに対し、従業員満足度と顧客満足度の両方を重視する企業では31.1%となっています。
5年間で売上高が増加傾向にある企業は、顧客満足度のみ重視の企業では48.2%、従業員満足度と顧客満足度の両方を重視する企業では57.1%となっています。
社員にとって魅力ある職場づくりに取り組み、従業員満足度を高め、離職率を下げた方が(定着率を高めた方が)、業績に関しても良い結果が得られているのです。
ちなみに、ここでいう定着率の定義は、こうです。例えば、新入社員が100名入社して、1年後、その100名のうち80名が在籍していたのであれば、入社1年目の定着率は80名÷100名=80%となります。3年後の在籍が60名であれば、3年目定着率60%ということになります。
離職率でいえば、1年目20%、3年目までで40%ということですね。
平成30年3月の卒業者の業種・企業規模関係なく平均値でいうと、高卒で1年目の離職率が16.9%、2年目28.9%、3年目36.9%、大学卒で1年目の離職率が11.6%、2年目22.9%、3年目31.2%となっています。(データ出所:厚生労働省職業安定局集計より)
御社の定着率、離職率はいかがですか?
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論理的な考え方
次に、離職率が高い、定着率が低いことによる弊害についてお伝えしたいと思います。
様々な弊害がありますが、私が考える大きな弊害は、以下の3点。
- ①組織力が高まらない(先人の知見が活かせない)
- ②対外的イメージが悪化し、新しい人材を集めにくくなる
- ③採用コストが高まってしまう
人は一つの仕事の経験を積むことでスキルや知見を高めていけます。が、離職率が高く、そのスキルや経験が高まる前に辞めてしまうということの繰り返しでは、社員が十分に成長することもなく、高い知見が継承されません。つまりは組織力も高まっていきません。
また、求職者はハローワークなどで企業の離職率を確認できます。離職率が高い、すなわち労働環境が悪い、仕事がきつい、仕事が面白くない、人間関係が悪い、ハラスメントが横行している、社員に優しくない、賞与が良くない、業績が悪化している、等々マイナスのイメージを持つことになります。「この会社、何かある…」という不信感につながり、新しい人材を集めにくくなります。
③の採用コストについては、2019年度の新卒採用及び中途採用1人当たり平均採用コストは、新卒採用で93.6万円、中途採用で103.3万円となっています。(出所:就職白書2020〈株式会社リクルート 就職みらい研究所〉)。 ちなみに、18年度はそれぞれ、71.5万円、83.0万円ですので、採用コストは高まっていると言えます。
ここでいう採用コストの中には、求人広告掲載費、合同会社説明会やオンライン説明会の参加費、説明会や面接の会場費、内定者への研修費、面接担当者や採用担当者の人件費、求人広告担当者の人件費、候補者や内定者に支払う交通費等が含まれます。
離職率の高さからもたらされる弊害について3つお伝えしました。
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情緒的思考とは
次に、離職理由についてみてみたいと思います。
厚生労働省の「令和3年雇用動向調査」によると…
「上司が意見を聞いてくれない」、「誰も助けてくれない」、「成長が感じられない」、「仕事が面白くない」、「会議で何も決まらない」、「会社のビジョンが見えない」等が挙げられています。
弊社が支援した企業でもやはりこのような不満が蔓延していました。入社3年目までの離職率が28%。おおよその企業概要で言うと、社員数は約3,000人ほどの製造業です。なお、この離職率は製造現場採用の社員は対象としておらず、いわゆる事務職・技術職の社員を対象とした数字になっています。
「離職率を下げたい」というご依頼をいただいてから、クライアント企業様の担当者と私とで、お互いに「若手社員のこの不満に対しては、こう対処してみてはどうだろう、こんなことしたらいいんじゃないか、あんなことしたら面白いかも、これはどうだ、あれはどうだ」と意見交換をしながら、「離職率低減プログラム」を構築し、翌年の新入社員への対応を開始しました。
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それらのハイブリッドを目指す
基本的なコンセプトはこうでした。
「先輩社員がメンターとして付き、新入社員に伴走する」、「先輩社員が新人にとってのタテ・ヨコ・ナナメの人間関係構築を支援する」。
若手社員のヒアリング結果から、「誰も教えてれない」「放ったらかしにされている」という声が非常に多かったからです。
色々な取り組みを行いました。今回は、そのうちの2つをご紹介したいと思います。
個人的に一番効果があったのは、「モチベーション・チェック」と呼ばれる仕組みを構築したことだと思っています。
新入社員の4月時点のモチベーションレベルを「100」として、毎月、モチベーションがどれぐらい変化したのかを、完全に新入社員の主観的評価でメンターに申告します。併せて、その点数を付けた理由も明記します。その変化を折れ線グラフで見える化してもらいました。例えば、4月に100だったモチベーションレベルが、6月には80になった。その理由が「先輩社員の方々の仕事ぶりを見て、あんな風に取引先とコミュニケーションが取れるようになるのか、少し不安を感じている」とか「想像していた営業職のイメージと違う。まさかヘルメットを被って製造現場を回るとは思っていなかった」等と書いてあれば、即座にメンターがフォローするわけです。新人のモチベーションの変化をなるべき早く察知して、それに対処する、これだけで離職率を下げるのに大きな効果がありました。
もう一つは、メンターとなった先輩社員同士での情報交換の場を作ったことです。これによってうまくいった事例、うまくいかなかった事例などをメンター同士で情報交換し、自分の後輩育成・指導に取り入れることができました。お互いに刺激を与える仕組みでもあり、メンターとしての自覚も高められました。また、自分だけがメンターとして大変な思いをしているのではない、という実感を得られることにも意味があったと思います。
その他、新入社員の成長感を得られる仕組み、新入社員が会社全体に馴染みやすくなる仕組み、新入社員が自分の業務を標準化できるようになる教育の仕組み、更にはメンターになった先輩社員への教育の仕組み、メンターになったことを名誉に感じられる仕組み、等々様々な取り組みを行いました。
これらの取り組み一つひとつを詳細をご紹介したいところではありますが、今回は2つの仕組みの紹介だけとさせて頂きました。もし、ご興味のある方は以下の問い合わせフォームからお問い合わせいただければ幸いです。
オンラインでも、メールでもお話をさせていただきます。
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最後に…
「こんな会社では働けない」という理由での離職を防ぐには、とにかく会社や社員同士が一人ひとりの存在を大切にすることだと思います。そのためにも、特に若手社員には。コミュニケーションを小まめに取り、放ったらかしにされているという不満を持たせないようにする仕組みづくりがポイントとなります。
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株式会社ナレッジ・プラクティス・コンサルティング 代表取締役社長
中小企業診断士・事業承継士・経営コンサルタント宇井 克己
製造業・コンサルティング会社を経て2002年に独立。『経営者も社員も働くことに喜びと幸せを感じられる組織作りを支援すること』を使命とし、コーチングやファシリテーション、正しい問題解決手法を駆使して「考える社員、考える組織」&「高業績企業」を多数輩出。年間の研修・講演回数は150回以上。



