金融機関での40年と新たな1年
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#02 初めてのことをやってみよう
こちらは2024年7月に弊社メールマガジンに掲載された記事の再掲です。
初めてのことをやってみようと思った。
金融機関に30年以上勤め、その間に業務遂行に必要な一定の知識を身に付け、適宜の規程改定や新制度にも、支障なく対応してきた。
退職して仕事に一区切りつけ、還暦をいくつか過ぎた今、全く経験のない分野について、どれくらいの理解力・記憶力・応用力があるだろうか。若い頃に比べれば当然、衰えはあるが試してみたいと思った。
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困難と成果
ハローワークの掲示板に、求職者支援訓練「Webデザイン・オフィスパソコン科」期間4か月・平日5日間9時から15時30分までの授業・通学による受講コースがあった。訓練対象者の条件は「Word・Excelで文字入力できる方」とある。今までもPCで資料・報告書等の作成をしていたから問題ないだろう。
面談による選考を経て受講が決定し、開講式・オリエンテーションが行われる。受講生は、私以外20~40歳代の14名。
授業内容の大半はWebプログラミング演習との事で、一人一台のデスクトップパソコンが用意され授業が始まった。基本的にペーパーのテキストはなく、テキストデータをダウンロードし、PDFテキストにより授業が進められる。
「Photoshop」という画像の修正・加工を行う事ができるデザインソフトが、最初の教材だ。
先生は「アートボードを画像に書き出す場合は、レイヤーパネルでアートボードを右クリック、書き出し形式はJPGで…」と説明するが、今まで耳にした事のない単語の連続で、日本語の筈なのに全く意味が分からず、PDFテキストにラインマーカーを引くことも出来ない。冷や汗が体を伝い、頭の中では非常事態を知らせるアラームが鳴っている。理解力については早くも白旗を上げた。落ち込む中、午前の授業が終わり弁当を食べながら一息入れる。
午後の授業は「午前中に保存したバナーをサンプルにして…」と変わりなく平然と進む。「午前中に保存したバナー?」すでに私の記憶力では、保存した筈のバナーが思い出せない。
そもそも「バナー」って何だっけ。その後も「ドロップシャドウ」「クリッピングマスク」等、見知らぬ用語が次々と出現し、頭の中はパンク寸前だ。しかし、ここでリタイヤするわけにはいかない、何とか授業についていこうと、覚悟を決めた。
恥を忍んで、解からないことはすべて挙手質問し、あるいは再度の説明を乞うた。 授業の進捗を考慮すれば、他の受講生には済まない、との思いはあったが、若いクラスメイトは好意的に受け容れてくれた。
放課後の自習、帰宅後の復習が、日課になった。覚えられない用語とその意味、キーボードショートカットと機能名などを記した付箋を作り、授業前にディスプレイ画面の周りに花びらの様に貼り付け、どうにか授業内容を理解しようと色々工夫をした。授業は「HTML/CSSの記述方法」「プラグインの導入」「Webサイトの構築」等、次々と未体験ゾーンを進んでいく。そんな苦しい4か月だったが、先生・クラスメイトにも助けられて、ようやく修了式を迎え、訓練修了証書を手にした。結果、私の理解力・記憶力・応用力の衰えは思った以上のもので、かなりショックを受けた。
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新しい世界を知る
だが、判ったこともあった。初体験の中で、困難に直面した時の対処の仕方は若い時と変わらない、どこか既視感があった。状況・年齢は変わっても「三つ子の魂百まで」という事か。そして何よりも嬉しいのは、4か月前までは全く縁のなかった『Webデザイン』という新しい世界(ほんの一部だけど)を知ることができた、これが一番の成果だ。
上記のとおり、ボロボロ体験の私が言うのも憚られるが「初めてのことをやってみる。」お薦めです。
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松永一九(ペンネーム)
昭和30年代生まれ、地域金融機関に就職。40年近く勤めた後、いわゆる「会社人」とは異なった目線で世の中を見たい、かかわりを持ちたい、との思いから心機一転、退職して会社人ではない社会人一年生を始める。
The Rolling Stones「It’s Only Rock ‘n Roll」、Donald Fagen「The Nightfly」が愛聴盤



